2026年6月14日(日)、国立新美術館で開催中の「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」に行ってきました。
月に数回はいろいろな展示を観に行くようにしているものの、ピカソについては「なんか不思議な絵を描く人」くらいの知識しかありません。ポール・スミスも、「おしゃれなストライプのブランド」くらいの認識です。
かなりざっくりした状態で観に行ったのですが、今回は作品だけでなく、部屋ごとにガラッと変わる雰囲気に圧倒されました。
日曜日の夕方16時半頃に滑り込んだところ、並ばずにスッと入場できてラッキー。


あ、解説パネルの文章めちゃくちゃ長い……。読むのちょっと面倒だし、早く中に入っちゃお!
最初は「ピカソに影響を受けたポール・スミスのコラボ作品が並んでいるのかな?」なんて思っていたのですが、実際はまったく違いました。
ピカソの作品と、そこからインスピレーションを受けたポール・スミスによる「空間デザイン」が融合した、これまでにない刺激的な世界だったのです。
(後から「さっきの長い説明、ちゃんと読んでおけばよかった!」と激しく後悔することになるのですが……笑)。
トロンプ・レスプリ (精神を欺くもの)
最初の部屋で目にしたのは、自転車のサドルとハンドルを組み合わせたものが16個。
そのうちの1つだけ、ポール・スミスのブランドでよく目にするマルチストライプ柄のサドルがありました。


テーマはウォーリーを探せのような、間違い探し?
横に視線をずらすと、ピカソの《牡牛の頭部》が展示されており、再びポール・スミスの作品を見ると、なぜか牛に見えてしまう自分がいました。

その一歩引いた配置のバランスがとても絶妙。専門的なことは分からなくても、「見せ方ひとつで、なんだか特別なものに見えてくるから不思議だな」と、最初からワクワクさせられます。
『ヴォーグ(流行)』中の 芸術家
次に現れたのは、雑誌『ヴォーグ』の表紙が壁一面に敷き詰められた、もの凄くインパクトのある部屋。
とにかく斬新でおしゃれです。

ただ派手なだけでなく、額縁や出口面の壁に使われている「鮮やかな水色」がアクセントカラーになっていて、空間全体がなんとも引き立つんですよね。
「色の組み合わせだけで、こんなに部屋の印象って変わるんだなあ。」と、ファッションデザイナーらしい一面を肌で感じて、入って早々に演出のパワーに引き込まれました。
水色の額縁に近寄ってよく見てみると、なんと雑誌に落書きが。これはピカソがよくやっていたそうで、きれいな雑誌も形無しのいたずらに、思わずクスッとしてしまいました。

青の憂鬱
賑やかなヴォーグの世界から一転して、深い青に包まれた静かなセクションに入ります。

ここに飾られているのは、暗くて少し寂しげな絵ばかり。いわゆるピカソの「青の時代」の作品だそうです。

わ、急に部屋が暗い……。なんだかこっちまで気分がどんよりしてきそう。
空間全体が青いせいで、見ているこちらの気分まで少し引っ張られそうになるのですが……
その先に見えた「明るいピンクの部屋」を見つけた瞬間、パッと視界が開けて救われたような気持ちになりました。
この「体験の強弱」のつけ方、見ている人の感情の揺さぶり方が本当にすごくて、ただ絵を並べているだけじゃなくて、部屋ごとに気分まで動かされる感じが面白かったです。
バラ色の女性たち
続くピンクの部屋は、床まで少しくすませた同系色で統一されていました。
暗い部屋から移動してきたので、この鮮やかさは少し眩しいくらいです。

「青の憂鬱」の部屋では、私のような絵の素養がない人でも抵抗なく見られる人物画が多かったのに対し、この部屋あたりから、だんだんと不思議な絵のタッチに変化していきました。
ピカソの頭の中が変化していく過程を、部屋の色と一緒に旅しているような感覚になります。
キュビスムの実験室
さらに進むと、いよいよ「キュビスム」のセクションへ。もはや私の知っている対象物ではないモノが描かれた作品が並びます。
絵のタイトルに「グラス、リンゴ、本」と書かれているのですが、画面の中にあるのは立体がバラバラに解体されたような不思議な図形たち。


この絵のどこにリンゴがあるの?

真ん中の、なんとなく丸くて少し浮いて見えるがそうなんじゃない?
もはや絵画鑑賞というより、完全にふたりで「宝探しゲーム」状態です(笑)。
そもそも、あらゆる対象を一度バラバラの立体(キューブ)にしてから、限られた色数で再構成しようと考えたピカソの熱量って凄まじいですよね。
この技法に行き着くまでに、さっきのピンクの部屋で見たような、簡素なタッチの段階を経たんだろうな……と想像すると、なんだかゾクゾクします。
ただ、「この難解な絵から、ポール・スミスは一体どこに影響を受けたんだろう?」という謎は、ここではまだ深まるばかりでした。
子ども時代
細い通路の窓からチラリと見えた「子ども時代」のセクションは、アイスブルーの壁に黄色の縁取りが映える、本当に素敵な空間。

遠くに見えるひし形の壁と配色のバランスが同じで、飾られているピカソの《アルルカンに扮したパウロ》という絵の衣装(道化師の衣装だそうです)からインスピレーションを受けたのかな、と考えたり。
また、《トラックの玩具で遊ぶ子ども》という絵の展示方法にも驚きました。

普通なら「この子は一体何をしているんだろう?」と絵そのものを眺めて終わるところですが、ポール・スミスはその絵の背景の一部だけを切り取って、壁一面に大きなグリーンのベタ塗りと抽象的な植物の線として再現していたんです。
複雑な絵の中から「ここ!」という部分だけを拾って、こんなに気持ちいい空間にしてしまうのがすごいなと思いました。
アッサンブラージュとコラージュ
次のセクションは、花柄がパッチワークのように貼り付けられた、キュートで特に女性が好みそうな印象の部屋。
ここには、ピカソの《口髭の男》というタイトルの作品があったのですが、プリント生地がコラージュされていて、やっぱりタイトルがなければ私には絶対に人には見えません(笑)。

でも、こういう作品から着想を得て、この可愛い空間演出へと翻訳してしまうポール・スミスの脳内はどうなっているんだろう。自分ではまったく浮かばないアイデアの連続に、衝撃を受けっぱなしです。
闘牛からストライプ、そして一点ものへ
後半は、さらに部屋の演出方法のコントラストが激しくなってきます。
部屋全体が真っ赤に染まった空間に白黒の版画が並ぶ「闘牛」セクションは、襲われている姿の生々しさと、鮮烈すぎる赤のエネルギーが強くて、ちょっと疲れを感じて早々に脱出。

その後に続く、ポップで可愛いけれど、ずっといると目がチカチカしそうな「ストライプ」の部屋や、ピカソが陶芸に没頭していた時代の白いお皿がズラリと並ぶ「一点もの」の真っ白な部屋にたどり着く頃には、完全に五感がキャパオーバーになってしまいました。

ちなみに黒いお皿には魚の跡が残っていて、個人的には「焦げ付いたリアルな鍋」を思い出して面白かったです(笑)。


情報量と色彩の刺激が強すぎて頭が痛くなってきた(笑)。ちょっと一度、ゆっくり目を閉じて休ませたいから、立ち止まらせて……。
どんなに素晴らしいデザインやコンテンツでも、強い色が続きすぎたり情報量が多すぎたりすると、受け手は疲れちゃうんだな……と、身をもって体感。
マイペースに休憩を挟みながら回るのが、この展覧会を最後まで楽しむコツかもしれません。
展覧会のピカソ
最後のセクションには、ピカソの過去の展覧会ポスターが壁にギュッとランダムに敷き詰められていました。この集め方、やっぱり最高におしゃれです。
実はこの日、チョコ色の無地のコットン着物でお出かけしていたんです。
どの部屋の背景もカラフルで素敵だったので、心の中ではずっと「ここで写真撮ったら絶対に映えるじゃん……!」と葛藤していました。
でも「ここはフォトスタジオじゃない、作品に敬意を払わねば!」と必死に我慢していたんです。
が、最後の最後、このポスターの壁の前で楽しそうに写真を撮り合う人たちを見て、とうとう理性が崩壊しました。

……ごめん、やっぱりそこで1枚撮って!

はいはい(笑)

最後の最後に、マナー(?)の信念はガラガラと崩れましたが(笑)、大満足の一枚が撮れました。
これから行かれる方も、写真撮影OKのルールの範囲内で、ぜひお気に入りの空間の記録を残してみてください。
まとめ
約1時間の鑑賞でしたが、アートは必ずしも「分かりやすくて美しいもの」ばかりではないんだな、と改めて実感しました。
見る人にとって、何かしらの「アハ体験(気づき)」や刺激をもたらしてくれるものであれば、それだけで大成功なんだと思います。ポール・スミスの空間演出というフィルターを通すことで、色の組み合わせや、複雑なものをシンプルに見せる仕組みなど、たくさんの気づきとワクワクをもらうことができました。
見終わったあとは少しぐったりしたけれど、ものづくりってやっぱり面白いな、と元気をもらえた休日でした。
展覧会概要
- 展覧会名: ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ
- 会期: 2026年6月10日(水)〜9月21日(月・祝)
- 会場: 国立新美術館(東京・六本木)
- 開館時間: 10:00〜18:00(金・土は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
- 休館日: 毎週火曜日 ※ただし8月11日(火・祝)は開館、8月12日(水)は休館
- その他: 会場内は写真撮影OK、動画撮影はNGです。マナーを守って鑑賞を楽しみましょう。
- 公式サイト:https://www.nact.jp/exhibition_special/2026/picasso_paulsmith/

