契約変更が突きつけた現実
2021年8月半ば、受託先の担当者から連絡がきたとき、思わず息を飲みました。

今月から財務系の見直しが入り、契約を『準委任契約』に変更したい、という話があがっています。
簡単に言えば、月額固定ではなく、作業量に応じた支払いになるという話。

ん?待てよ。
私は即座に対応できるよう、他の大きな仕事は入れずに待機している状態でした。即対応できる「待機時間」も考慮に入れた上での月額金額だったはずです。

準委任契約になると、この待機時間はどうなるのだろう? 実質的なコストダウンではないのか?
詳細についてはまたMTGすると言われたものの、詳しい話はなかなか降りてこないまま。不安を抱えたまま時間が過ぎるのは、本当に辛いものです。
UIデザインから「雑用係」へシフトした業務内容
この業務委託を始めて約3年。当初はスタートアップ企業のSaaS(HR)マーケターとして、解析ツールを使いながらサイトのUI改善を担い、ワイヤーフレームからデザイン、コーディングまで一貫して行っていました。
しかし、取引先企業が成長するにつれ、状況は一変します。
内製化と、自分の首を絞めた「親切」
マーケティンググループの人数は増え、イラストやDTP経験を持つ若い社員がWEBデザインも担うようになりました。
私は徐々に、メイン業務だったUIデザインから外され始めます。
- バナー制作:
誰でも簡単にできるCanvaで、非デザイナーの社員が対応。 - LP量産体制:
私がWordPressのカスタムフィールドを駆使して「誰でも簡単にLPが作れるテンプレート」を作ってあげた結果、私の出番がなくなってしまったのです。

自分の首を締める結果になった。親切心が、そのまま自分の仕事の消滅に繋がるとは…。
「デザインもできるコーダー」という都合の良い存在
私の仕事として残されたのは、社員が誰もできない業務でした。

デザインはできる人はいるんですが、レスポンシブやセマンティックなコーディングまで出来る人は入社してくれないんですよね。今後もお願いしたいです。
つまり、私は、彼らにとって「デザイン監修もでき、社員ができない面倒なコーディングだけを引き受けてくれる都合の良い人材」になったということです。最近は制作よりも、社員へのデザインフィードバックやツールのオンラインレクチャーがメインの日も増えました。

指導は楽しい。感謝もされる。しかし、私はこの会社で社員を育てるための「臨時教師」ではないはず。
40代後半、「コーダーに成り下がる」ことへの恐怖
UIデザインの仕事が減り、コーディングだけの仕事をしていると、不安は拭えません。

今後、私はコーディングしか仕事がこないの?
取引先としてはコストを抑えたいのは当然です。彼らは最終的に、Web制作の内製化を完成させるでしょう。
(私の正直な葛藤)
UIデザイナーとして、マーケティングスキルを強化するべきだった。イラストも描けぬままUIデザインだけを楽しんだツケが回ってきた。
もう40代後半。このままではデザインスキルが落ち、市場価値の低い「コーダー」に成り下がってしまう。私は、クライアントにいいように使われる「雑用係」で終わりたくない。
ネガティブな考えが頭の中をグルグルと回ります。読み返しても楽しくない、見苦しい自分。ポジティブな言葉で締めくくるのが嫌になるほど、焦りだけが募っていきました。
ネガティブな記録こそ、価値がある
この記事は当初公開していたものの、途中から非公開にしていたのは、まさにこの「雑用係にされているのでは」という疑念と、ネガティブな自分を見せたくないという羞恥心からでした。
しかし、WEB制作を15年続けても消えないこの不安、このキャリアの葛藤は、きっと私だけの問題ではありません。
年齢とともに業務内容が「格下げ」され、市場価値の低下を恐れるフリーランスは、間違いなく存在します。
だからこそ、この「グルグル考えた記録」は、私自身の過去の記録として、そして同じ悩みを持つ誰かへの共感の証として、価値があると考え直しました。
不安で終わらせない。この状況を直視した上で、一歩踏み出す決意をします。
「ネガティブな自分」も全て受け入れて、とうとう立ち上がりました。

