40歳目前で正社員を辞めた「どん底」の告白
もうじき40歳。Web業界に入り約10年が経とうとしていた当時、私は大きな岐路に立たされていました。
「この先、派遣社員を続けていては仕事がなくなるかもしれない」という漠然とした不安から、意を決して正社員のアプリUIデザイナーにキャリアアップしたんです。
しかし、結果はわずか3ヶ月での退職でした。
正社員として働くことへのこだわりや、せっかく築いてきたキャリアへの期待は、受託案件のあまりの過酷さと、私自身のスキル不足という現実の壁に打ち砕かれてしまいました。
心身ともに限界を迎え、「仕事ウツ」のような状態に陥ってしまいました。
このどん底の状態から、どうやって次の仕事を見つけ、心身の安定を取り戻すことができたのか。今回は、40歳目前でキャリアを再構築した、苦しくも正直な私の転職体験を正直に綴ります。
正社員「アプリUIデザイナー」をわずか3ヶ月で辞めた理由
それまで、私は大手SNSアプリ開発のマークアップエンジニアを2年経験し、さらに知名度のある会社で業務アプリのUIデザイナーとして働いていました。経験を積み、少しずつキャリアが上がってきている実感があったのも事実です。
だからこそ、「次も需要が高いアプリ市場で」と考え、正社員のUIデザイナーという道を選びました。しかし、その決断がすぐに私を追い詰めてしまいます。
受託案件の過酷さと、デザイナーとしての決定的なスキル不足
新しい会社での仕事は、想像以上に過酷な受託案件でした。連日の激務で体はボロボロになり、以前の経験では通用しないほどの高度なデザインスキルが求められました。
私はBtoB企業のWeb担当者として、デザインだけでなくコーディング、企画、マーケティングまで浅く広く携わってきたため、「深く専門的なデザイン力」が決定的に不足していたんです。
結果、わずか3ヶ月で病んでしまい、正社員を辞めるという道を選びました。

また体調を崩してしまった。納期に追われる受託案件は、もう私のキャパシティを超えている……
「せっかくキャリアアップしたのに、デザイナーとしてのスキルが足らず辞めてしまった」という事実は、その後の転職活動に大きな悪影響を及ぼし、自信を完全に失わせてしまいました。
「誰も雇ってくれない」40代の地獄の転職活動:失敗事例集
デザイナーとしての自信を失い、かといってエンジニア思考にもなれない。ましてや、40歳を目前にした私には、まっさらでなんでも吸収できる若さもありません。
Web業界に10年近くいるのに「この歳で使いものにならない?」という不安に苛まれながら続けた転職活動は、まさに地獄でした。結果は、以下の通り、次々と失敗を重ねます。
| 応募先 | 雇用形態 | 結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 士業系WEB担当 | バイト | ブラック環境を予期し辞退 | 求人はあるが質の低いものばかり |
| マッチングサイトWEB担当 | 正社員 | 書類選考落ち | 正社員の壁の高さに絶望 |
| 苦手なゲーム会社 | 派遣 | 相性が合わず不採用 | 自分の軸がブレている感覚 |
| WEB制作業務 | 委託 | スキル不足で音信不通 | 誰にも必要とされていない |
| 時給1000円以下の事務 | バイト | 即戦力になれず不採用 | もはや職種も選べない |
誰も雇ってくれない現実に、「誰も雇ってくれないなら独立する?」という消去法的な考えまで浮かびました。良い未来が描けるはずもありません。制作会社の求人は多いものの、「また受託案件で体を潰してしまう」と、踏み出すことすら怖かったんです。

Web業界に10年いるのに、私はこの歳で使いものにならないのか? 存在自体消えてなくなりたい…
全てに絶望した時、考え方が変わった
スーパーのレジ、宅配バイト、清掃員。
「どの仕事なら納得して働けるんだろう」と、Webクリエイターというキャリアを一度捨てて、まったく別の仕事を検討するほど追い詰められました。不動産や保険の営業のスカウトもありましたが、人に接する仕事をしてこなかった私には恐怖しかなかったんです。
しかし、絶望の淵で立ちすくんだ時、自分の中で価値観が大きく変わりました。

賃金や長期採用(正社員)にこだわるより、自分が本当に楽しめる仕事は何か?
この問いに立ち返った時、過去の経験から得られた一つの答えがありました。それは、「BtoB企業の自社サイトの運用」です。デザインだけでなく、企画やアクセス解析、広告分析、ユーザーの行動を考えることが、最も楽しかった経験でした。

もう安定より、心身の健康と楽しさだ。正社員にこだわる必要はない!
この時、「正社員であること」への執着を捨てる決断をしました。安定よりも、心身の健康と、仕事の楽しさを優先することにしたんです。
心身の安定を取り戻した最終着地:「派遣の自社Web担当者」という選択
なんだかんだで2ヶ月半が経ち、ようやく希望の仕事が決定しました。
たどり着いた最終着地は、まさに過去の経験から導き出された答えでした。
それは、派遣社員としての「自社サイトのWEB担当者」です。
安定と楽しさを両立できた理由
- 働き方:
正社員にこだわらず、派遣という働き方を選んだことで、残業がほぼなくなり、自分の時間を確保できるようになりました。これが何より心身の安定に直結しています。 - 仕事内容:
BtoBの企業で、デザインにそこまでこだわりすぎず、PDCAの意識が高い環境です。サイトのリニューアル設計やアクセス解析、広告分析など、ユーザーの行動を考える運用業務が中心です。
かつて病むほど辛かったUI設計とは違い、今はサイト運営のすべてを楽しむことができています。
40代からの再スタートとこれからの目標
2ヶ月半の地獄のような転職活動を経て、やっと気持ちを吐き出し整理できるようになりました。
「40歳を目前にして正社員を辞める」という挫折は、本当に辛いものでしたが、そのおかげで「受託の激務で自分を追い詰める必要はない」「正社員でなくても、自分に合った仕事を見つければ幸せになれる」という大切な教訓を得ることができました。
残業がなく自分の時間が確保できるようになった今、一からWebの知識を勉強し直す意欲も湧いています。
今度はすぐに音を上げることなく、この仕事と新しい知識の習得を、地に足をつけて続けていきたいと思っています。

